スラッグ弾は散弾銃の実包の中で最も威力があり、一発必中で的や獲物を捉えることに長けている、実弾として射撃手や狩猟者から高い信頼を得ている装弾です。そのスラッグ弾の、種類/スペック/威力がひと目で分かる動画紹介/用途や価格帯など歴史よりも、いま知っておくべきことにフォーカスした解説を行いますので参考にしてみてください。
主要なスラッグ弾6種類
- サボット
- ワッズ
- リーサル
- ブリネッキ
- ライフルド
- ボール
よく使われる呼称としては、スラッグ弾とサボット弾が主にはなっていますが、その歴史は古く、ハンター(マタギ)が使う弾として広く知られています。
猟友会のメンバーや、単独猟をする人が、熊・猪・鹿などの大物を狙う際や、スラッグ射撃に用いられているので銃猟を始める予定の入門者の人はよく理解しておくことを推奨します。
補足
スラッグ弾の呼称としては「スラグ弾」もありますが同義語です。
目次
スラッグ弾とは?
スラッグ弾とは、散弾銃から発射する『単発の弾頭』のことで、日本国内ではスラグ射撃をするシューターが使います。他には、ハンターとして狩猟(銃猟)を行う人が、熊・鹿・猪など大型の獣を速やかに仕留めるために活用されています。
後ほど紹介しますが、スラッグ弾には、主に6種類の弾頭があります。
ここがポイント
スラッグ弾は散弾銃の装弾でありながらも、弾頭がライフル銃のように一発弾となっており、複数の粒状の弾を発射する散弾とは一線を画する銃弾です。
スラッグ弾の種類 ≪代表格≫
サボット
ライフルドショットガン専用の弾頭
ブリネッキ
台座と弾頭の連結で直進性が安定
ワッズ
発射後に弾頭と台座部分が分離する
ライフルド
スリッドで回転して直進性が高まる
リーサル
弾頭に切り込みがあり着弾時に分散
ボール
重心バランスにより安定が難しい弾
スラッグ弾の種類には、ワッズ型×2種類、ブリネッキ型×2種類、フォスター型とボール型の4タイプ(型)があります。弾頭の重量は、1オンス(=28.35グラム)程度で、有効射程距離(狙いが定まる限界距離)は50~200mの範囲内で、最大到達距離(飛距離)は300m~1kmとなっています。
比較用/一般的な散弾銃の弾丸
▼スラッグ弾の基本スペック
弾頭名称 | 種別 | 弾頭重量 | 有効射程距離 | 最大到達距離 |
---|---|---|---|---|
サボット | ワッズ型 | 1オンス以下 | 100m-200m | 1km |
ワッズ | ワッズ型 | 1オンス以下 | 100m-200m | 1km |
リーサル | ブリネッキ型 | 1オンス | 50m程度 | 700m程度 |
ブリネッキ | ブリネッキ型 | 1オンス | 50m程度 | 700m程度 |
ライフルド | フォスター型 | 1オンス | 50m程度 | 700m程度 |
ボール | トラディショナル型 | 1オンス | 30m程度 | 300m程度 |
スラッグ弾と、普通の散弾の画像でご紹介したように、一発と多発では命中精度が異なることは容易に想像できるかと思います。どのスラッグ弾を使うかは、目的によるので、銃砲店のスタッフさんに聞いてみると良いでしょう。
スラッグ弾の威力を動画でチェック
スラッグ弾を種類ごとに撃ってみた動画を紹介します。百聞は一見にしかずということで、ベネリのポンプアクション散弾銃・スーパーノヴァを使って、さまざまな種類のスラッグ弾を「金属の標的/防弾ガラス/ゲル」に向かって撃っている映像を御覧ください。
YouTubeチャネル「1ShotTV」の動画内での、スラッグ弾比較は、日本国内で試して見せることができない内容として一見の価値があります!日本語字幕を表示できるので閲覧の際にはご利用ください。
スラッグ弾とライフル弾が比較される理由
スラッグ弾とライフル弾は、よく比較されますが、その理由としては下記のような事情があると考えられます。
- ライフル銃所持には10年必要
- 命中精度の高い射撃がしたい
- 大きめの獲物を仕留めたい
- 将来はライフル銃を使いたい
スラッグ弾がライフル弾と比較される理由は、何といっても日本国内では、散弾銃を手に入れるために銃砲所持許可を申請~取得して10年を経過しないと、ライフル銃を持つ段階に移れないという厳しい条件があるからに他なりません。
ライフル弾は、飛距離と命中精度が高く、軍隊ではスナイパー射撃に用いられる、まさに『一発必中』の世界で必要とされる装弾であることは、諸外国の映画をご覧になられた経験から判断がつきますよね。
しかしながら、スラッグ弾とライフル弾とでは、命中精度もさることながら活用目的、威力や破壊力が全く異なります。
単純に命中精度では、ライフル弾のほうが全体的に高いと言えるでしょうが、スラッグ弾も改良が重ねられており精度向上しています。
ただし、どんなに比較してもスラッグ弾がライフル弾に敵わない。
それは「長距離射撃」をする場合において、ライフル弾の方が圧倒的に命中精度が高いということです。近距離射撃の場合の威力ではスラッグ弾の方に軍配があがるでしょう。
ライフル銃の所持許可について補足
ライフル銃の所持許可には銃砲所持許可を取得して、実際に散弾銃を所持してから10年というのが一般的ですが、下記3つの例外があります。
①獣類の捕獲を職業とする者(いわゆる職業猟師)
②農林水産業など事業に対する被害を防止するため必要とする者
③標的射撃のためライフル銃を所持しようとする者(協会推薦状)
スラッグ弾は世界の軍隊でも使われている
諸外国の軍隊では、狙撃手がライフル銃を用いて、ターゲットを狙い撃ちにしますし、そのことはニュース番組や戦争の特集でご覧になった方もいらっしゃることかと思います。
そのような中で、ショットガン(散弾銃)を使って、戦地の地上戦で建物の扉を破壊する様子は、映画の世界では珍しい光景ではなくなっています。
軍の特殊部隊が、建物の扉を破る際は、ハンドガンではなくショットガンを用いていることにお気づきでしょうか。そのような場合に用いられるのは、どこに弾が当たっているかわからない、散弾ではなく、命中精度が高く直接的な破壊威力をもつスラッグ弾が用いられるのです。
注意点
日本では、このようなスラッグ弾の利用方法は、自衛隊以外には許されていません。また、自衛隊であっても、民家を自由に破壊するような威力をもった武器を市街地で、好き勝手に利用することには制限があります。
スラッグ弾の用途
スラッグ弾の用途1『スラッグ射撃』
スラッグ弾で射撃をする場合は、ライフル射撃場の中でも大口径の使用許可を出している射場がメインの練習場所となります。射撃の種類は大きく分けて2つ。
- 動的射撃「動く的を撃つ」
- 静的射撃「的紙を撃つ」
動的射撃は、イノシシが描かれており、急所部分に的の描が書かれているものが主流です。
静的射撃は、よくイメージする丸い円が描かれた的を狙います。
▼関東のスラッグ射撃場
スラッグ弾の用途2『狩猟』
スラッグ弾を狩猟に使う人は多く、日本国内では、鹿や猪といった中型獣が田畑を荒らす被害が減らず、害獣駆除が行われています。他にも、ハンティングが目的の人も、下記のような獲物に対してスラッグ弾が用いられています。
- シカ猟(中型)
- イノシシ猟(中型)
- クマ猟(大型)
狩猟の場合は、撃った獲物を精肉することがあるため、通常の散弾だと肉を広範囲に痛めてしまうこともスラッグを使う理由のひとつとなっていますが、他には命中精度と殺傷力などが挙げられるでしょう。
スラッグ弾の用途3『その他』
スラッグ弾の使い道として、スラッグ射撃・銃猟(狩猟)を紹介してきましたが、軍隊や警察などが行動する際にもショットガンが用いられ、シーンに合わせてスラッグ弾を活用することがあります。
スラッグ弾を撃てる散弾銃
スラッグ弾を撃てる散弾銃の口径は、12番(約1.85cm)/20番(約1.57cm)/410番(約1.04cm)となっており、調べていると目に入ってくる名称として『スラッグ専用銃/ハーフライフリング専用銃/ボルトアクション式散弾銃』など、様々な種類の名称が出てきます。
このように、スラッグ弾ひとつとはいえ、細かく分かれているのはいいのですが、名称の中には俗称もあることから「やっぱり初心者は用語多すぎる段階で参入を諦めているな~」と感じてしまいますね。
それはそうと、スラッグ弾を撃てる散弾銃を販売している銃メーカーの代表格を紹介しますので、銃砲店さんで用途にあう銃を選ぶ際の相談をする参考にしてみてください。
- レミントン (Remington)
- サベージ (SAVAGE)
- ブローニング (Browning)
- モスバーグ (Mossberg)
- ミロク (MIROKU)
- ターハント (Tar hunt)
- ベレッタ (BERETTA)
上記が、代表的なスラッグ弾を撃てる散弾銃を扱っているメーカーです。スラッグ射撃だけをするなら専用銃の購入を検討してもいいと思いますが、クレー射撃にも使う場合は、通常の散弾とスラッグ/サボットなどを扱えるオールラウンダーもいいでしょう。
スラッグ弾の価格相場
散弾実包の国内での値段相場は下記のとおりです。
- 12番 ≫ 40円程度/1発
- 20番 ≫ 50円程度/1発
- 410番 ≫110円程度/1発
- スラッグ弾 ≫ 300円程度/1発
- サボット弾 ≫ 700円程度/1発
スラッグ弾が高く感じますね…。しかし、実際に高いことは間違いありませんので、スラッグ射撃や銃猟を目的にしようと考えている方はお財布と相談してみましょう!
相場補足
弾は何発入りの箱を買うかによって価格が変動します。自分でハンドロードする場合も、当然ながら相場とは異なってくることをご理解ください。
スラッグ弾についての「まとめ」
スラッグ弾の情報はお役に立てたでしょうか。本サイト以外にも、スラッグ弾が生まれた歴史的な経緯や、スペックや仕組みを詳細に案内している方もいらっしゃいます。どの情報提供者も、それぞれに対象としている人が異なるので、それによって内容にも変化がありますのでいろいろとチェックすることをおすすめします!!
本サイトでは、スラッグ弾って「ざっくりいうと、どんな弾で、どのような種類があるの?」という疑問をもっている散弾銃初心者の方や、これから猟銃等講習会への参加・銃砲所持許可申請を考えている入門者向けに情報を発信しました。
日本国内では、スラッグ弾を撃てる射撃場は決して多くないですが、老舗銃砲店のメンターの話では『若い人にどんどん入ってきてほしいんだよ。』とのことで、業界的には歓迎ムードなので協力してくれる人は出やすいといえます。
コストや資格取得ハードルが高めではありますが、ジビエブームでハンティング界隈も盛り上がっており、スラッグという言葉を見聞きする機会も増えていますので、是非、銃砲店さんへ足を運んでいただきたいと考えております。
最後までご覧いただきありがとうございました。
スラッグ弾に関する「よくある質問」
スラッグ弾は、散弾銃(ショットガン)から発射する実包のことで、通常の散弾が「細かい粒を多量発射」するのに対して、スラッグ弾は1発の弾頭を発射するのが特徴です。
サボット/ワッズ/リーサル/ブリネッキ/ライフルド/ボールの6種類が主なスラッグ弾です。形状の種別については4種類あります。詳細に知りたい方は、記事内『スラッグ弾の種類 ≪代表格≫』の内容を参考にしてみてください。
スラッグ弾というのは「1発弾」の総称であると考えてください。サボット弾とは、ライフル弾と似た形状の弾頭を有するスラッグ弾のことなので、別々に考えるというよりは、それ自体もスラッグ弾頭であるとお考え下さい。
通常の散弾と比べると、何倍もの威力があるといっていいでしょう。1発の大き目の弾頭を発射するので、着弾時の衝撃が集中する性質を発揮します。弾頭によっては、着弾した瞬間に分裂するものもあり、威力は強いですし反動も大きいとお考え下さい。
スラッグ弾は、英語で『SHOTGUN SLUG』と呼ばれており、球状の弾を一発だけ発射するボールブリッドと呼ばれる鉛を使っていました。その起源は、19世紀頃に使われていたマスケット銃にあるといわれ、量産化に成功していましたが、球状で表面の微細な凹凸でも飛距離に応じて命中精度の低下が大きかったため、次第に改良が加えられたものが誕生していきました。