猟銃というのはどんな銃なのか、これから銃猟を始めたい初心者の人向けに、散弾銃/ライフル銃/空気銃(エアライフル)の基礎知識を解説。新米ハンターとして、猟銃を選ぶ段階で役立つ判断軸を正しく得るために欠かせない、狩猟者の銃知識を余すことなく要点をおさえて情報提供します。
猟銃ってなに?
猟銃とは、狩猟者(ハンター)が動物を狩る際に用いる銃器のことで、日本国内では大きく分けて3種類を所持することが可能な猟具です。
- 散弾銃(ショットガン)
- ライフル銃
- 空気銃(エアライフル)
猟銃には上記がありますが、狩猟対象となる動物、ハンティングフィールド(猟場)など用途と場面により適する銃は異なります。
猟銃の歴史は古く、マタギと呼ばれる狩猟で生計を立てていた人たちが、その昔使っていた『火縄銃』も猟銃の類です。
現代では、猟銃の主流は「散弾銃」と「ライフル銃」で鳥獣~大型獣まで幅広く用いられており、空気銃は主に鳥獣や小型獣の止め刺し用途などに用いられています。
猟銃の種類
猟銃の種類について、散弾銃/ライフル銃/空気銃を別々に紹介していきます。
散弾銃 [猟銃の種類 1/3]
散弾銃は下記5種類があり、メーカー/モデルにより扱える実包(弾)のサイズなど仕様には個性がありますので、所持目的や体格などに合わせて選択するのが一般的です。
- 自動式
≫単身自動式散弾銃といい、最大発射可能弾数が3発、瞬時に連射できることから猟銃として人気が高い。(クレー射撃も楽しむ人は共用に適している) - 手動式
≫ポンプアクション式ショットガンといい、最大3発を連続発射可能だが、発射毎に手元のポンプを引いて弾を込める必要がある。(弾数を把握しやすいので猟銃として愛好家が多い) - ボルトアクション式
≫スラッグ専用ショットガン。見た目は完全にライフル銃だが、使用する実包は『スラッグ弾』で、一発弾頭で主に鹿や猪など大きめの獲物を狙う。 - 上下二連式
≫装填できる弾は2発、連射が可能な構造だが、単銃身に比べ上下の発射後の軌道見極めにコツが要る。 - 水平二連式
≫装填できる弾は2発、連射が可能な構造だが、上下二連式に比べ左右の軌道の見極めが若干難しい。
はじめて猟銃を扱う場合、これらの散弾銃を所持することになるのですが、弾だけでも「散弾、スラッグ弾、サボット弾」など良い意味で種類が豊富なので選択の幅が広く、初心者が品定めするには入門時の知識ハードルは若干高めです。
▼散弾銃のメーカー(猟銃)
- SAVAGE/サベージ(米国)
- BERETTA/ベレッタ(イタリア)
- RC.MIROKU(日本)
- Perazzi/ペラッツィ(イタリア)
- Remington/レミントン(米国)
- BROWNING/ブローニング(米国)
- Breda/ブレダ(イタリア)
- Benelli/ベネリー(イタリア)
- Mossberg/モスバーグ(米国)
他にも散弾銃メーカーは数多くありますが、日本国内で猟銃として使われているモデルを製造しているメーカーは上記が主体です。
狩猟にライフルが必要な方へ
エゾシカ猟/イノシシ猟/クマ猟のように、獲物が大型の場合、殺傷能力が高いライフル銃が必要な場面があります。そのような場合、散弾銃でも一発弾頭を発射できる実包として「スラッグ弾」が用いられます。
スラッグ弾について≫
ライフル銃 [猟銃の種類 2/3]
ライフル銃は、銃身(筒の部分)の内側に溝が螺旋状に刻まれている、一発弾頭を発射するタイプの銃です。素人目には、ライフル銃と散弾銃の区別が難しいですが、明確な違いは『実包(弾)の形状と材質』にあります。
▼ライフル銃の種類 <主なタイプ>
- ボルト式ライフル
≫弾の装填を毎回レバーを引いて行うタイプ(映画でみるアレです) - セミオートライフル
≫1発目の発射で生じたガス圧で次弾が装填されるタイプ
▼ライフルを弾で見分ける場合
- ライフル銃の弾
≫弾頭と薬莢ともに金属製で真鍮や軟鋼の金色系 - 散弾銃の弾(ショットシェル)
≫金属の弾頭とプラスティック状の薬莢の組み合わせ。サボットスラッグを発射できる、ハーフライフルについては、銃身の半分に螺旋状のソリッドが入っているものは、散弾銃となります。
▼猟銃としてのライフル銃メーカー
- BLASER/ブレイザー(ドイツ)
- SAUER/ザウエル(ドイツ)
- Remington/レミントン(米国)
- SAKO/サコー(フィンランド)
- TIKKA/ティッカ(米国)
- BROWNING/ブローニング(米国)
- WINCHESTER/ウィンチェスター(米国)
- MIROKU/ミロク製作所(日本)
- BLASER/ブレイザー(ドイツ)
上記以外にも、数々のメーカーがありますが、紹介しきれないのでこれくらいにしておきましょう。
補足
ライフル銃は、世界の警察や軍隊でも用いられ、有名なのは『スナイパーライフル』ですが基本構造は同じようでも用途が異なるため性能面でも、猟銃としてのライフル銃とでは比較になりません。
空気銃 [猟銃の種類 3/3]
猟銃として用いられるエアライフル(空気銃)は、圧縮した空気を利用し、ペレットと呼ばれる鉛や錫(スズ)製の弾を発射する猟具。主な狩猟対象は鳥類ですが、罠猟で捕まえた鹿や猪などの止め刺し用途でも使われており、口径は4.5mm/5.5mm/6.35mmの3種類、タイプは以下の4タイプがあります。
- プリチャージ式
- ガスカートリッジ式
- マルチストローク式
- スプリングピストン式
近年は、プリチャージ式/ガスカートリッジ式が主流で、空気の充填が面倒な方式の空気銃は下火気味。銃猟をする際に、手返し良く発射できないといけないことから、これから始める人はプリチャージ式を選ぶのが無難です。
ちなみに、空気銃の場合「エアライフル」の名の通り、1発弾頭を発射する銃であり、弾頭形状として通常のライフル銃の弾頭のようなタイプのスラッグ弾もあります。(例:FXハイブリットエアスラッグ弾 [6.35mm])
注意点
競技用エアライフルと、猟銃のエアライフルとでは形状も特性も異なるので、競技も楽しみたい方は別途専用銃を購入することを推奨します。
猟銃の値段
散弾銃 | 【新銃】180,000円程度~ 【中古】60,000円程度~ |
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ライフル銃 | 【新銃】180,000円程度~ 【中古】70,000円程度~ |
空気銃 | 【新銃】200,000円程度~ 【中古】70,000円程度~ |
猟銃の値段は新銃でも、メーカー/モデル(型式)/年式によって全く異なり、高いものだと150~200万円を超える代物もあります。
しかし、これから狩猟を始める場合、自動車免許を取得したての頃と同じように、中古車からスタートするイメージで『中古銃』から始めることをオススメします!
▼中古銃をオススメする理由
- とにかく練習が大事だから
- 購入後に用途が明確化するから
- いつまで続くか分からないから
- 猟場で傷つけても気にならない
- 新銃は趣向が定まってからで十分
それでも、銃砲所持許可や銃猟免許の取得まで、長い時間を要しているでしょうから、やっぱり待ちに待った『はじめての猟銃』はピカピカの新品が欲しい!!
そのように思う気持ちもわかるので、そのような人は、自分だけで考えないで『先輩ハンター』や『銃砲店』に相談しながら、用途や自分の趣向に合いそうな猟銃をチョイスするためのアドバイスをもらうようにしましょう!
猟銃を所持できる年齢
猟銃を所持できる年齢について、非常に紛らわしく感じている人がいるようなので、ここでシンプルにまとめておきます。
猟銃を所持するということ
猟銃を所持するということは、銃砲所持許可を得ていれば、装薬銃(散弾銃/ライフル銃)と空気銃を手に入れて射撃場であれば実包の射撃をすることが可能です。
日本体育協会や射撃連盟からの推薦枠
日本体育協会や射撃連盟からの推薦状があれば、未成年でも、装薬銃は18歳~/空気銃は14歳~所持することができます。(今回は目的が異なるため詳細は割愛)
年齢制限は『銃猟免許』にあり!
猟銃を所持して、狩猟をするということは、第一種銃猟免許もしくは第二種銃猟免許が必須なので、銃砲所持許可が問題ではなく、狩猟免許の年齢制限に注目する必要があります。
第一種銃猟免許=20歳以上、第二種銃猟免許=18歳以上となっているので、年齢を満たしていな方は残念ながらしばらくの間、狩猟はお預けとなります。
ライフル銃を持てる条件(年数など)
ライフル銃(実銃)を所持するためには、一般的に『散弾銃を継続して所持している期間が10年必要である』とされていますが、以下の3つの場合は例外的許可が下りることがあります。
- 獣類の捕獲を職業とする者(いわゆる職業猟師)
- 農林水産業など事業に対する被害を防止するため必要とする者
- 標的射撃のためライフル銃を所持しようとする者
③の場合、日本体育協会(日本ライフル射撃協会)からの推薦を受けた、ライフル射撃競技に参加する選手(政令・第11条)、またはその候補者とされており18歳以上であることが条件として設定されています。
猟銃の免許制度
猟銃の免許制度は、若干わかりにくいのですが『2種類』あります。
- 第一種銃猟免許
- 第二種銃猟免許
猟銃で狩猟を始めるには、上記の他、銃を所持するための許可として『銃砲所持許可』を受ける必要があります。
銃砲所持許可+第一種銃猟免許
銃砲所持許可+第一種銃猟免許
但し、ライフル銃は散弾銃を所持している期間が10年を超える人と、狩猟を生業とする法人など条件をクリアした人のみが所持することを許されています。
銃砲所持許可+第二種銃猟免許
※空気銃=実銃であり別名「エアライフル」と呼ばれています。
狩猟免許と銃砲所持許可について
猟銃をもって狩猟を始めるには、何から始めればいいのかについて、各種ガイドを用意していますので参考にしてみてください。
まとめ
今回は、はじめて猟銃を持つことを検討する人が、今後得る情報を精査する際の軸となる知識を提供することを主眼において企画しました。
猟銃といっても、狩猟専用の銃というものは少なく、それはスラッグ専用銃かカスタム銃なので、散弾銃/ライフル銃/エアライフル(空気銃)のラインナップの中から、用途や活用シーンに合う銃を選択することが最も大切です。
これは、猟銃に限った話ではなく、人は商売をするうちに、差別化を図るために様々な言語を生み出していきます。
そのため、ものすごくシンプルなことが複雑化して、入門者にとってはハードルが上がるばかりで、結果的に業界の衰退を招いたりします。
この記事を読んでいるあなたは、これから猟銃を使ってハンティングを楽しみたいと考えている方だと思います。狩猟の世界は、雑誌や一部の映像コンテンツで語っているほど、ややこしい世界ではありません。
私たち編集部では、これからも、このような「実は簡単だよ!」という内容を含めた、銃砲界隈の情報を執筆していきますので、一緒に楽しんでいきましょう!!
銃砲に詳しい人は、銃の形状や口径などのスペックで「ライフル銃」と「散弾銃」を区別できますが、初心者にはわかりにくいので銃砲店を訪問して見せてもらうのがオススメです。